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「チック,チック...ブーン!」
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ロックのフレディ・マーキュリー、バレエのジョルジュ・ドン、落語の古今亭志ん朝など。若くして亡くなり“伝説”となった天才は、洋の東西を問わずどの時代にもいる。ミュージカルの世界で言うなら、それはジョナサン・ラーソン。誰もが知る傑作ミュージカル『レント』の生みの親であり、その初日前夜に逝ってしまった若き作詞作曲家。彼の悲しみは上記の3人と違い、「自分の成功をいっさい味わえずに」逝ってしまったこと。よって『レント』に先立つこと6年前、彼は突破口を見出せない鬱屈とした自分の生活に物語を重ねた自伝的ミュージカル『チック、チック…ブーン!』を書き上げていた。30歳の誕生日を目前に主人公ジョナサンの脳内では、チック、チックと時限爆弾の秒針が時を刻む。爆発するまえに、何かを成し遂げなければ! そんな作曲家としての切迫感と、才能に対する不安感。主演の山本耕史が“魂のミュージカル”と称する本作に、山本自身30歳の誕生日を迎えるいま3年ぶりに再び挑む。


≪■攻略ポイントその1 原作者のソロ・アクトから生まれたミュージカル≫

自分の作曲家としてのキャリアに不安とあせりを抱いて暮らすジョナサン。「名曲を生み出してみせる!」という魂を焦がすような熱意だけは溢れるものの、現実は相変わらずネズミ色だ。安賃金のダイナーでアルバイトし続け、恋人スーザンには結婚を迫られる。友人のマイケルは夢をあきらめビジネスマンに転身した。果たして自分も友人たちのように、妥協してその他大勢と同じ“現実”を受け入れるべきなのか…。劇中語られる主人公ジョナサンのこうした苦悩は、すべて原作者ジョナサン・ラーソンの魂から紡ぎ出されたリアルな台詞。彼自身ソーホーにあるムーンダンス・ダイナーで働き続け、イースト・ヴィレッジの安アパートで寒さを最低限しのぎながら作曲活動にあたっていたのは有名な話。本作のマイケルや『レント』の多くの登場人物がHIVウィルスに侵されているのも、現実に彼の友人たちがエイズで亡くなっていったからだ。よってこの作品も当初は原作者の自伝であるという特徴を生かし、ラーソン自身のソロ・アクトという形で『30/90』と題され上演された。が、それが幾度かにわたり改訂され題名が変更され、現在の3人のキャストによるミュージカルという形で落ち着いたという。ちなみに『30/90』というタイトルは今では、本作のオープニングナンバーに使われている。1990年に30歳を迎えるジョナサンの息苦しい焦燥感を、切なくパワフルに歌い上げる名曲だ。


≪■攻略ポイントその2 山本耕史をはじめとする実力派キャスト≫

『レント』日本初演で主人公マークを演じて以来、ジョナサン・ラーソン作品にめっきり惚れ込んでしまった山本耕史。その後オリジナル版『レント』キャストのアンソニー・ラップとの交流も始まり、ラーソン作品の日本における“体現者”を自認している。豊かな声量と真摯な演技が、山本の持ち味。「ジョナサンの魂を体現できなければ、この作品は何も残らない」と自ら語り、その歌声と演技に“ラーソン・スピリッツ”を目一杯注ぎ込み、ズドンと観客の心に稲妻のような光を落としてみせる。そんな山本の恋人役スーザンには、シンガーの愛内里菜。ミュージカル初出演となるが、その自在な高音部と奔放なキャラクターで愛くるしい役柄を見事に演じきってくれるはず。友人のマイケル役には、米国ビルボードにランクインする実力を持つ歌手ゲイリー・アドキンズ。バークレー音楽院で学び、かの有名テレビ番組「STAR SEARCH」で準優勝した経歴を持ち、今回、日本語歌詞のミュージカルに初挑戦するという。本気でジョナサン・ラーソンの“言霊”を伝えることのできる3人が顔を合わせ作る実力派ミュージカル。楽しかったねー、と友人と気楽にぺちゃくちゃおしゃべりしながら帰るというより、一人一人が自分の魂と自問自答しながら帰路につくような…、そんなリアリティのある舞台ができあがりそうだ。


文:岩城京子





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