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演劇・ミュージカル
「スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理髪師」
「スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理髪師」

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あまりの過激さゆえに日本では4半世紀もの間上演を封じられてきたミュージカル・スリラー『スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理髪師〜』が、07年の年明け早々、満を持して上演される。今回、日本版で演出を担当するのは宮本亜門。さらに注目のキャストはミュージカル界の最高峰・市村正親と演劇界の至宝・大竹しのぶという豪華版。なんと本作が初共演であり、大竹はこれが初ミュージカルという貴重なステージとなる。また作詞・作曲はブロードウェイの巨匠、スティーブン・ソンドハイム。美しい旋律と厚みのある不協和音とで演者に高いハードルを与えることで知られる彼のミュージカルが、他にも武田真治、城田優など個性派の役者が揃う中、ギリギリのテンションで展開する。それはミュージカル界を超えた、ひとつの事件。これはもう、目撃するしかない!


≪the Point-1【死の匂いをまとうストーリー】≫

舞台は19世紀のロンドン。愛する妻を悪徳判事タービンに陵辱され、さらに無実の罪で流刑にされていたベンジャミンは、15年ぶりに町に戻ってくる。そこで初めて妻が自殺し、娘のジョアンナまでもが判事の元で養育されている事実を知る。早速名前をスウィーニー・トッドと変え、理髪店を再開、客の喉を掻き切って金品を奪いながら、判事への復讐の機会を狙うベンジャミン。一方、“ロンドン一まずいミートパイ”というパイ屋を経営するラヴェット夫人は、死体の処理に困ったスウィーニーから相談を受ける。不景気で「いい肉」が仕入れられずに困っていた彼女は、秘密の連携プレーに喜ぶのだが…。
日本初演は’81年。当時の市川染五郎(現・松本幸四郎)、鳳蘭、市原悦子らの上演で、相当に魅力的な舞台であったはず。だが日本では、その後再演されることなく21世紀を迎えてしまった。それは実在した殺人鬼の物語という他に、人間の深部を鷲づかみにするような物語性と、それを巧みに表す高度な音楽性とを受け入れる土壌が、往時の日本にはまだ出来上がってなかったせいかもしれない。そして、07年。猟奇的な事件が当たり前になったこの国で、本作が観客の目にどう映るのか。そのリアクションが照らす行方は、ミュージカルという枠を超え、注目を集めるに違いない。

≪the Point-2【張り巡らされるテンション】≫

この衝撃の物語を、高次なエンターテイメントにまで高めたのが、ミュージカル界の巨匠スティーブン・ソンドハイムだ。『ウエスト・サイド・ストーリー』の作詞や『太平洋序曲』、『イントゥ・ザ・ウッズ』などの音楽を担当、トニー賞受賞も多数のブロードウェイの星。本作はそんな彼が’75年にブロードウェイで初演、トニー賞最優秀ミュージカル賞などを受賞した後、’94年にロンドンのデクラン・ドネラン版ではオリビエ賞を受賞。さらに’04年にロンドンで上演されたジョン・ドイル版がブロードウェイに逆輸入、本年度のトニー賞最優秀演出賞などを受賞して、現在もロングラン中という文句なしの話題作だ。
今回、日本版で演出を担当するのは宮本亜門。’04年の『太平洋序曲』では日本人で初めて本格的にブロードウェイに進出、トニー賞にノミネートされるなど、ソンドハイムの精神を継ぐ者としてこれ以上の適任者はいないだろう。注目のキャストは、スウィーニーにミュージカル界の最高峰・市村正親、ラヴェット夫人に演劇界の至宝・大竹しのぶという豪華版。なんと本作が初顔合わせであり、さらに大竹にはこれが初のミュージカル。現在、大竹は歌の稽古に励んでいると漏れ聞くが、そんな彼女の姿が見られるのもかなり貴重なもの。他にミュージカル2本目となる武田真治、人気急上昇中の城田優など、それぞれがくっきりと個性を見せるキャストが出揃った。美しい旋律と厚みのある不協和音とで出演者に高いハードルを与えることで知られるソンドハイムのミュージカル。ギリギリのところで張り巡らされたテンションで展開する舞台を、楽しみに待ちたい。

≪the Point-3【現代に再生するイメージ】≫

19世紀のロンドンを舞台にしたシリアル・キラーといえば、切り裂きジャックの名前を思い出す人も多いのでは。産業革命を前に混沌とした時代を文字通り“切り裂いて”ゆくように姿を現し、あっという間に消えていった存在に、現代の私達がこんなにも惹かれるのは何故だろうか。
初演以来、’94年にロンドンでも光を浴びた『スウィーニー・トッド』は、’97年にはジョン・シュレシンジャー監督、ベン・キングズレーの主演で映画化。19世紀のロンドンのセットやスウィーニーの理髪店の椅子(殺人の場)の描写が話題を呼んだ。さらに最近、好評ロングラン中の状況を汲んだのか、新たな映画化の話も飛び出した。『シザーハンズ』(’90)、『チャーリーとチョコレート工場』(’05)などで知られるティム・バートンが監督を務め、これが6作目のタッグとなるジョニー・デップが主演するニューバージョンの映画『スウィーニー〜』だ。ミュージカル映画になる予定で、あのジョニーが歌と踊りを集中的にレッスン中というからこちらも楽しみ。ちなみにストップモーション・アニメ『ティム・バートンのコープスブライド』(’05)で花嫁のお母さん役をしているジョアナ・ラムリーは、前回映画版でのラヴェット夫人役。さらに当のジョニーも、切り裂きジャックをモチーフにした映画『フロム・ヘル』(’01)に主演していたのは記憶に新しい。『スウィーニー〜』周辺への注目度が高まる中、’07年の先陣を切るのがこの、日生劇場での舞台。スウィニー・イヤーとなる一年の幕開けを、このステージでしかと実感してみてはいかがだろう。

文:佐藤さくら





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