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演劇・ミュージカル  「新編・我輩は猫である」
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今も幅広い世代から愛される文豪、夏目漱石。その人柄については、「坊ちゃん」そのままの気が短い正義漢であったとか、逆に、長く神経症に苦しめられた繊細な人であったなど、さまざまなエピソードが残っている。そして彼の妻・鏡子にもまた、実に多くのエピソードがある。そのほとんどは「家事が苦手」「ずぼら」「言いたいことをズケズケと口にする」などの悪評。しかし本当に鏡子は悪妻だったのか。そして夫としての漱石はどんな男だったのか。

この興味深い夫婦を、高橋克実と小林聡美というベストなキャスティングで上演するのが「新編・我輩は猫である」だ。あまり知られていない、本当にあった夫婦のエピソードをもとに、ひと組の夫婦のちょっと風変わりな愛情を描く。演出にあたるのは、蜷川幸雄の演出助手として数々の舞台を支えてきた井上尊晶。間違いなく、夏の話題作のひとつだ。

≪この舞台のツボ [1] 鏡子夫人は悪妻? 良妻?≫

森鴎外や谷崎潤一郎など、その夫人の逸話が注目される小説家は多いが、漱石もそのひとり。妻・鏡子は長い間、個性的な女性が多い小説家の妻のなかでも、稀代の悪妻といわれてきた。その理由は、家事をしない、何をやっても大ざっぱ、金遣いが荒い、生意気、思ったことをズケズケという、などである。しかし近年、その評価は一変しつつある。

昨年、発行された「夏目漱石と明治日本」(文藝春秋臨時増刊)や、やはり昨年の年明けにオンエアされたドラマ「夏目家の食卓」(TBS/宮沢りえ、本木雅広主演)などによると、鏡子がおおらかで明るく愛情に満ち、漱石がいかにその点に助けられ、子供たちがのびのびと育ったのも彼女の功績であることがわかる。 鏡子悪妻説はおそらく、古い慣習や価値観で測った女らしさに基づくものなのだろう。お嬢様育ちでわがままな一面を持ち、教養もあったために口が達者だった鏡子が周囲の反感を買いがちだったことも事実。だが、お見合いの席で、歯並びの悪いのも気にせず口をあけて笑う(当時、女性が笑うときに口元に手をあてないのは、はしたないとされた)鏡子の姿に「この人は裏表がない。」と好意を持った漱石が、妻の大ざっぱさを嫌うわけがない。

そして鏡子もまた、イギリス留学で神経症を悪化させた漱石が、帰国後、家族に暴力を振るうようになり、それを見かねた知り合いから離婚を勧められても「あの人が私を嫌いになって暴力をふるうなら離婚もするが、病気なので治る見込みがある。だから私は別れません。」ときっぱり答えたという。派手な喧嘩も多かったらしいが、心の底では確かな絆で結ばれていたことは間違いない。この夫婦関係が、舞台ではどんなドラマになって現れるのか、楽しみだ。



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