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演劇・ミュージカル ナイロン100℃ 「カラフルメリィでオハヨ 〜いつもの軽い致命傷の朝〜」
ナイロン100℃ 「カラフルメリィでオハヨ 〜いつもの軽い致命傷の朝〜」 写真
 
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「どんな劇作家にも一生に一本しか書けない“特別な台本”があると思います。」と、88年初演時のチラシにケラリーノ・サンドロヴィッチが素直に作品への思い入れを吐露した芝居。それが今回4演目を迎える『カラフルメリィでオハヨ〜いつもの軽い致命傷の朝〜』だ。当時、脳梗塞で入院中だった実父の枕元に座り、息子であるKERAが淡々とその父の最期の言葉を書き記すことで紡ぎ上げられた本作。劇作家の、家族への人生へのそして死に対する真情が作品全体から流露する。だが喜劇作家である性からか、滑稽にしか生きられない人間の致し方なさからか、KERAはそんな死の叙情性をもあっけらかんと突き抜けたギャグで笑い飛ばしてみせる。見終えたあとに痛みと共に温もりが残る、やるせなく乾ききった泣き笑いの歌がここにある。

≪戦略1 KERAの真っ向勝負な私戯曲≫

劇作家ケラリーノ・サンドロヴィッチは、まどろっこしく、複雑で、面白いぐらい迂回的な性格の持ち主だ。恥じらいを隠すために笑いを飛ばし、ベタ笑いをつぶすために悲劇をまぶし、涙臭いメロドラマから逃げるためにバカっぽさを売りさばく。もう何が何やら。そうやって自分自身の志向性さえも作品ごとに裏切り続けることで、上手い具合に、いつも誰かに”キャッチ”をつけられることを避けている。でもそんな偏屈者のKERAが真っすぐに素直に自分の家族を見つめ、唯一、トラップを張らずに描いたのがこの『カラフルメリィでオハヨ』。本作の初演時にはKERA自身「実験をしない実験」を、作品の公約として掲げていた。ただもちろん最も最近の再演からも既に9年の時が流れているということで、脚本には大きなテコ入れがなされるはず。父の死から18年、年を重ねた息子は今”自分にとって最も身近な死”をどのように捉え直すのか。

≪戦略2 最強キャストで“最終再演”≫

ボケ始めた“みのすけ老人”を持て余す家族のスケッチと、病院からの脱出を企てる、“みのすけ少年”の奇妙な逃亡劇。この二つの物語を徐々にシンクロさせていくことで、KERAの軽く重い筆はなめらかに舞台を泳いでいく。初演時には演出も手掛けた手塚とおるが老人役を担ったが、二演目以降は山崎一が好演。今回の再演でも、飄々とソラッとぼけるみのすけ老人に扮する。また初演以来つねに少年役を演じ続けるという快挙を成し遂げてきたのが、ナイロン団員のみのすけ。今回ももちろん、利発なのかバカなのかぞんざいなのか分からないその無二の存在感で観客を煙に巻いてくれるはず。同じく初演からの続投者である犬山イヌコのほか、峯村リエ、三宅弘城、大倉孝二、村岡希美などのナイロンのスタメン面子が久々に集うのも頼もしい。さらにナイロン初登場の馬渕英俚可、劇団M.O.Pの看板役者・三上市朗、サモ・アリナンズの座長・小松和重、猫のホテルの市川しんぺーなどが脇を固め盤石の布陣で”最終再演”に挑む。

文:岩城京子

§ストーリー§
波音の聞こえる浜辺の病院で、みのすけ少年はちょっと知恵の足りない仲間の患者達と脱走計画を企てている。そんな患者達を阻止しようとする医者や看護婦たち。彼等はスパイで、患者を逃がさないように見張っている。だが患者達は、その症状のせいなのかまったく集中力がなく、脱出は難航する。一方、その脱走劇と同時進行で、ボケ始めたみのすけ老人とその家族の物語が展開。ボケ老人をもてあます息子夫婦と、ふてぶてしい居候。大学生の娘とその友達。やがて、みのすけ少年とみのすけ老人の時間軸は交錯していく……。


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