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「開放弦」
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▼大倉孝二&水野美紀インタビュー



弦楽器を奏でるときに、指で押さえない弦を「開放弦」という。そんな弦のように微妙な距離感を抱えたまま結婚した夫婦とその友人、そして元恋人ら、7人の男女が紡ぎだす虚偽、依存、嫉妬、そして恋愛感情とは。日常を切り取る独自の視点が人気の岸田戯曲賞受賞作家・倉持裕の書き下ろしを、渇いた笑いと疾走感溢れる舞台づくりに定評のあるG2が演出する、注目のラブ・ストーリー。出演は舞台出演が続く水野美紀のほか、舞台に映像にと活躍中の大倉孝二、作品ごとにさまざまな顔を見せる京野ことみ、映画『NANA』のヤス役が記憶に新しい丸山智己など、新鮮な顔合わせでおくる。また劇中曲は、日本を代表するギタリスト、渡辺香津美が担当。この夏、最高のスタッフとキャストが揃った舞台『開放弦』で、切ない恋愛の不条理を感じてほしい。


≪the POINT-1 【“開放弦”の意味】≫

タイトルの「開放弦」とは、弦楽器を演奏するときに指で押さえていない弦、あるいはその状態を指す。本作では役者が実際にギターを演奏するシーンが登場するが、弦を指で押さえることで成立する演奏に浮かび上がる“押さえていない弦”の存在は、いかにも劇作家・倉持裕の視点を表して興味深い。「やらない」のと「していない」とが同義でないことを知っている作家なのだ。
物語はある農村を舞台に、唐突な結婚をした恵子(水野美紀)と遠山(丸山智己)夫婦から始まる。夫婦なのになぜかよそよそしい2人と、その訳を知る遠山の知人・門田(大倉孝二)。そこへ遠山の元恋人・依代(京野ことみ)や旅行中の漫画家夫婦(河原雅彦と犬山イヌコ)、さらに担当編集者(伊藤正之)も加わり、物語は意外な方向へと向かう。そして本作の通低音となっているのが、ギターの音色。作曲と演奏を担当するのは、日本ジャズ界を代表するギタリストである渡辺香津美だ。演出を担当するG2が渡辺の大ファンであることから実現したこの企画。渡辺自身、舞台の劇中曲を担当するのは初めてというから、こちらにも期待したい。


≪the POINT-2 【劇作家・倉持裕の世界】≫

脚本を担当する倉持裕は、72年生まれ。現在34歳で、96年に旗揚げした演劇ユニット「プリセタ」、00年に結成した劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」の活動のほか、映像関係の仕事も多くこなしている。04年には「ペンギン〜」で上演した作品、『ワンマン・ショー』で第48回岸田國士戯曲賞を受賞。選考委員の野田秀樹が述べた「三つのカップルの相似関係が、微妙にずれていく。ずれていく面白さ、いわば不整合性の妙は、演劇ならではのもの」(同賞選評より)との言葉は、倉持の特質をシンプルに言い当てている。今回の『開放弦』でも、7人の男女が接触することで生まれる虚偽、依存、嫉妬、そして恋愛感情は、時折水面に浮かび上がる魚のようにさりげなく、水面はあくまで穏やかだ。だが倉持自身が制作発表で「居心地の悪さ、というキーワードから生まれた作品」と語ったように、観る者は静かな水面下に何が潜んでいるのかを、頭のどこかで気にしながら舞台を注視することになる。物語のラストに見た魚影は、自分にとって何なのか。すとん、と腑に落ちたなら、観客は舞台の醍醐味をまたひとつ知ることになるのだ。


≪the POINT-3 【旬の素材とレシピ、そして料理人】≫

演劇に詳しくない人でも、「岸田國士戯曲賞」の存在は知っているだろう。劇作家の岸田國士の遺志を汲み、昭和30年に設定された戯曲賞で、白水社が主催。「演劇界の芥川賞」とも称され、主に新人劇作家への奨励を目的としている。97年の松尾スズキ、99年のケラリーノ・サンドロヴィッチ、01年の三谷幸喜らの受賞が有名だが、03年の中島かずき(劇団☆新感線)の後、04年に受賞したのが、いわゆる“小劇場”を中心に活動する倉持裕だった。演劇ファンにはその実力を知られていたものの、他の演劇賞が主に大箱の作品、そして興行成果を吟味した(これももちろん大切)賞を発表するなかでの受賞。それは本家ともいえる芥川賞が、話題づくりの狂想曲に翻弄されているようにみえるのを鑑みても、まっとうなニュースだと思われた。選考委員に井上ひさし、岩松了、坂手洋二、野田秀樹など、自己模倣を是としない劇作家が連座していることを、これほど頼もしく思ったことはない。
いささか話が硬くなってしまったけれど、この『開放弦』で味わえるのは、そんなお墨付きのレシピ(倉持)に、現代劇の舞台は初めてという水野美紀、映画『NANA』のヤス役でブレイクした丸山智己など、旬の素材ばかり。波に乗る料理人(G2)が、最高のスパイス(渡辺香津美)と共に腕を振るうというのだから、贅沢なこのもてなしをぜひ味わってもらいたい。

文:佐藤さくら





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