【演劇・ミュージカル ≪舞台のツボ≫】 (up 2004/12/07)
RUPプロデュース「歩兵の本領 soldier’s mind」
 浅田次郎の同名小説の舞台化。まだ国民のあいだで自衛隊に対するアレルギーの強かった70年代。さまざまな理由から入隊してしまった若者達が過ごす、無意味に見えるほど厳しく、理屈で整理できないほど優しい、訓練の日々を描く。主演は、ドラマ「ビー・バップ・ハイスクール」でデビューして大きな話題となった窪塚俊介。そして劇団扉座や鴻上尚史作品などの舞台でも活躍しながら、「世界の中心で愛をさけぶ」「ホワイトアウト」などの映画でも鮮烈な印象を残す高橋一生。そして現在、「仮面ライダー剣<ブレイド>」に出演中の森本亮治。「エリザベート」で日本デビューを果たした韓国のミュージカルスター、パク・トンハ。紅一点には「マザー&ラヴァー」に出演者の水川あさみ。そしてバラエティでもいい味を見せるベテラン、的場浩司ら。涙のツボを確実に刺激する浅田作品だが、さらに演出に当たるのが「北の国から」の杉田成道と、ハンカチを忘れたら後悔しそうな舞台になる予感あり。鮮度の高いキャストによって、時代が変わっても現代と共通する、瑞々しい青春の物語が上演されることだろう。

≪この舞台のツボ [1] 誰が好みか、イケメンキャスト≫

何よりもこの作品で話題になりそうなのが、入隊したばかりの若手隊員を演じる俳優たち。これが初舞台となる窪塚、若いながらもキャリア豊富な高橋、超美形の森本、舞台にも韓流を起こしそうなパクと、個性あふれる面々が揃った。自衛隊が舞台なので、13人中12人が男優だが、特にこの若手4人は、ルックスもそれぞれに魅力的。観にいった女性の多くが、つい「この人もかっこいいけど、あの人はかわいい」などと比べて迷ってしまいそうだ。注目株をひとり挙げるなら、やはり窪塚。来年春公開予定の映画「火火(ひび)」で、映画初出演にして主演ながら、名女優・田中裕子とがっぷり四つに組む熱演を見せ、キャリアに似合わない安定感ある演技力を示している。“なんとかの七光り”なんて甘く見ていると、きっと驚く。初めての舞台にも、物怖じせずに臨むことだろう。

≪この舞台のツボ [2] 舞台と好相性の浅田次郎≫

日本で1番、多くの人から新作が待たれているのは、この作家ではないか。そう思うほど、出す新作がすべてベストセラーチャートの上位に入る浅田次郎。主人公は男女どちらもあり、一般の会社員からヤクザまで幅広い職業で、笑いもシリアスもある。しかしどんな話も必ず、最後は気持ちよく泣かせてくれる──。世代、性別を超えて支持される、完成度の高いその世界は、映像・舞台から引く手あまたで、これまでも多数、舞台化されてきた。映画にもなった「ラヴ・レター」、ドラマにもなった「天国までの百マイル」、舞台では「舞い降りた天使」というタイトルになった「椿山課長の七日間」、天海祐希のひとり芝居として話題を集めた「ピエタ」などなど……。さまざまな劇団やプロデュース公演で上演されている作品もあるが、この「歩兵の本領」は初めての舞台化。好きな浅田作品ランキングに入れる人も多いが、ここはぜひ、浅田ファンからも合格点がもらえる舞台にしてほしい。

≪この舞台のツボ [3] 自衛隊にはネタがいっぱい?≫

イラク問題、新潟の地震、そして札幌雪まつりと、硬軟様々なシチュエーションで話題になる自衛隊。しかし、詳細がほとんど知られていないシステムや活動内容は、一般の人から見て“不思議な常識”に満ちている。だからなのか小説やマンガの題材にされることが多く、また、ヒット作も多い。来年公開予定の映画「亡国のイージス」は、テロリストと海上自衛隊の息詰まる戦いを描いてベストセラーになった同名小説が原作で、邦画としては破格の製作費で、海自隊(海上自衛隊をこう略す)の協力を得て大掛かりな撮影が行なわれているという。その原作者・福井晴敏が脚本を担当することでも話題なのが、やはり来年公開予定の映画で、20数年ぶりのリメイクとなる「戦国自衛隊」。戦国時代に自衛隊がタイムスリップするという破天荒なストーリーは、どんなリアリティを得て甦るか。そしてマンガでは、かわぐちかいじの「沈黙の艦隊」がビッグヒット作として知られている。「歩兵の本領」は、それらと違って訓練中の部隊の日常生活を描いているが、それでも「へえ」「まさか」と驚くことがたくさん出てくる。自衛隊の“不思議な常識”はたっぷり堪能できるのだ。
RUPプロデュース「歩兵の本領 soldier’s mind」 写真




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