【演劇・ミュージカル ≪舞台のツボ≫】

  (up 2004/07/23

「髑髏城の七人」

再演、再々演と、繰り返し上演される作品はたくさんあるが、劇団☆新感線の「髑髏城の七人」のように大胆に形を変えるものは滅多にない。90年と97年は劇団の公演として、会場の規模やステージ数を大幅にステップアップして上演されたこの作品は、今年(2004年)、2つに分裂した。春、新国立劇場と厚生年金会館で大盛況のうちに幕を下ろした「アカドクロ」と、秋の日生劇場で控える「アオドクロ」に。「アカドクロ」は、過去の公演でも同じ役を演じた古田新太を中心に、坂井真紀、水野美紀、佐藤仁美という新感線経験済み女優が一丸となり、シンプルだが濃い「髑髏城の七人」をつくり上げた。そして「アオドクロ」は、新感線作品ではすっかりおなじみの市川染五郎、舞台女優としても才能が光る鈴木杏、これが初舞台となる池内博之らが、新鮮なアンサンブルを武器に、派手でかっこいい「髑髏城の七人」をつくるという。上演のたびに評価が上がっていく作品の最新形は、一体どこまで行くのだろうか?

≪この舞台のツボ [1] ギンギラギンに派手っぽく≫

「アカドクロ」と「アオドクロ」は、キャストも完全に入れ替わるが、演出もガラリと変えることが、1年に同じ脚本を2度上演する最大の意味&意義だ。ではどう変えるかといえば、ひとことで言って、アカ=シンプル→アオ=ド派手。「アカドクロ」でも7年前の台本にかなり手を加えたが、それはストーリーの整理と、初演から14年たって38歳になった古田新太の、その年代ならではの魅力を出すべく、脚本の中島かずきが「飄々としてて渋くてかっこいい感じ。イメージは、かつての若山富三郎さん」と変えたものだった。しかし「アオドクロ」は「昔の東宝映画のオールスター祭りみたいに、歌って踊ってにぎやかに」がコンセプト。日生劇場に花道をつくり、衣裳も照明もギンギンにするという。染五郎が演じる捨之介も、徹底的にキザだとか。間違いなく、これまでにない「髑髏城の七人」になりそうだ。

≪この舞台のツボ [2] 女→男→女→男≫

かつて捨之介と深い因縁で結ばれていた仲間で、いまは女郎屋を営む無界屋蘭兵衛。この人物を「アオドクロ」で演じるのが、今回が初めての舞台となる池内博之だ。そして「アカドクロ」で同じ役を演じていたのは水野美紀。そう、蘭兵衛という役は少し特殊で、男性が演じても女性が演じても成立し、そこに蘭兵衛の大きな秘密が隠されている。普段は男らしい役が多い池内が、どんなふうにこの役を演じるのか、ヘアメイク&衣装とともに注目を。染五郎とのキスシーンあり、という噂もある。ちなみに初演は女性、再演では男性が演じたので、確率はちょうど50%ずつになった。

≪この舞台のツボ [3] あの役、その役、この人が。≫

同じ役を数ヵ月後に別の役者が演じる──。端から見ると「比べられて、さぞやりにくいことだろう」と想像してしまうが、本人たちは冷静で、口を揃えて「別の作品だと思っているので、特に意識していない」と語っている。としても、誰と誰が同じ役をやるのかは気になるところ。染五郎/古田、池内/水野のほかはどうなっているのか、アオとアカの配役をちょっと書き出してみよう。まず、大事件の発端となる秘密を知る少女・沙霧が鈴木杏/佐藤仁美、女郎のトップ極楽太夫が高田聖子/坂井真紀、謎の刀鍛冶が三宅弘城/梶原善、ただのタヌキ親父ではない二郎衛門がラサール石井/佐藤正宏。同じセリフでも、役者によって雰囲気がまったく変わるもの。「アカドクロ」を観た人は、歌や踊りを差し引いた冷静な比較を、「アオドクロ」だけ観る人は「アカドクロ」バージョンがどんなふうだったかを想像するのも、今年(2004年)の「髑髏城の七人」の楽しみ方だ。

「髑髏城の七人」 写真
≪『髑髏城の七人−アオドクロ』
映画館上映≫

チケット情報はこちら!

>> ★@ぴあにて市川染五郎&鈴木杏&
池内博之 インタビュー掲載中!

>> バックナンバーへ
Copyright (C) 2007 PIA Corporation. All Rights Reserved.