【演劇・ミュージカル ≪舞台のツボ≫】

  (up 2004/6/25

「鈍獣」
クセ者、ツワモノ、実力派、キーパーソン、芝居巧者、百戦錬磨、切り札、兄貴、ずるい男……。小劇場の自由な空気をまとったまま、トレンディドラマで、大作映画で、話題のミュージカルでとびきりの存在感を示す、生瀬勝久、古田新太、池田成志。どんな作品に出ていても、一瞬でその場面をピリッと引き締めるスパイス男たちが、自分たちのために自分たちで舞台を企画した。3人の共演だけでもすごいのに、脚本に宮藤官九郎、演出に河原雅彦というプレミアム感たっぷりのブレーンを引き込み、西田尚美、乙葉、野波真帆という才能豊かな美女を誘い込んで、新作を上演するという。物語はどうやら一軒のスナックが舞台になるらしいが、上演まで誰がどの役を演じるかは明かされない。いずれにしても、このメンツが揃って、安い“仲良し芝居”で終わるはずはなく、気が合うからこそ気が抜けない、ハイレベルな真剣勝負が展開されるはず。男×男、女×女、男×女の戦いを、じっくり観戦したい。

≪この舞台のツボ [1] 友達の友達は、また友達≫

この作品の「企画」にある名前は「ねずみの三銃士」。生瀬、古田、池田のグループ名である。そもそもこのすごい舞台の発端は、以前からずっと仲が良かった生瀬と古田、古田と池田がそれぞれに「なにかおもしろい舞台やりたいね」といっていたのを、古田が「3人でやればいいんだ!」と思いつき、声をかけたことから始まった。それが2年前で、生瀬と池田の本格的な付き合いはそこからスタートしたが、偶然にも、釣りや麻雀やゴルフなど共通の趣味が多く、そのために最初から話が弾み、古田があいだに入る必要はまったくなかったそう。ちなみに、生瀬と古田、古田と池田では、実のないバカ話を延々としているとか。脚本の宮藤は3人の友人、演出の河原は宮藤の友人と、まさに友達の輪がつながっていった公演なのだ。

≪この舞台のツボ [2] 会議室は、生瀬宅≫

3人で舞台をやると決めてから、脚本、演出、プロデューサーの決定、内容の絞り込みなど、決定事項はすべて民主的に、3人による話し合いで決定した。つねにその舞台となったのが、生瀬の自宅。お酒はあるが退室時間のない会議室として、かなり機能したらしい。宮藤への脚本依頼も、そこから本人へホットラインで。ただし女優の選出は、生瀬宅を出て、プロデューサーも交え、ひとりひとりが共演したい(させたい)人の名を挙げて決めていった。しかし4人が出した名前にはほとんどズレがなく、すんなりと意見がまとまったとか。乙葉と野波はこの作品が初舞台になるが、舞台には以前から興味があり、初めての舞台をこのメンバーと飾れることを大いに喜んでいる。シリアス、コメディ、いずれも得意な演技派・西田は、キャリアがある分、この舞台の意味を感じとってプレッシャーに武者ぶるいをしている。

≪この舞台のツボ [3] 元・同級生の、微妙な服従関係≫

3人から脚本の依頼を受けた宮藤は、「こんな話が書きたい」といって1冊の本を提示したという。実際の事件をもとに書かれたノンフィクションだったが、その内容のあまりの人間くささに生瀬、古田、池田もすっかり夢中になり、即OK。その本をインスピレーションの大もとに、宮藤は新たなフィクションを用意した。中学時代、ボスとセカンドと子分という関係を過ごし、それをひきずったまま大人になった3人の男。子分だった男は小説家となりデビュー作でいきなり賞を取るが、元ボスが経営するスナックを最後に足どりが消え……。その小説家の行方を追う女性編集者と、スナックに出入りする女たち。男同士、女同士の劣等感と優越感が複雑に絡み合い、さまざまな人間模様が見えてくる。初監督映画「真夜中の弥次さん喜多さん」をクランクアップしてすぐ、この脚本の執筆にとりかかっている宮藤。彼ならではのバカバカしい笑いと鋭い観察眼が、この6人によってさらに刺激されるに違いない。
「鈍獣」 写真
池田成志 写真 生瀬勝久 写真 古田新太 写真
野波真帆 写真 西田尚美 写真 乙葉 写真


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