【演劇・ミュージカル ≪舞台のツボ≫】

  (up 2004/4/23

「MIDSUMMER CAROL
〜ガマ王子とザリガニ魔人〜」
伊藤英明と長谷川京子が揃って初舞台を踏む、話題の作品。
脚本は後藤ひろひと、演出はG2。同じくパルコ劇場で上演され、大好評を得た「人間風車」「ダブリンの鐘つきカビ人間」を生み出した名コンビが手がけるシリーズの第3弾で、シリーズ初の書き下ろしとなる。
肝心の内容は、誰からも愛されず誰も愛さない老人と、記憶を蓄積できない少女の出会いを中心に進む、笑って泣ける感動のストーリー。入院患者も医師も看護士も、個性的な人間ばかりが集まった病院で、小さな触れ合いや別れが、やがて大きな出来事になっていく。伊藤の役は、子供の頃に天才子役と騒がれたものの今はパッとせず、自殺騒動を起こしてはその病院に担ぎ込まれる俳優。長谷川は、そこで働く男まさりの看護士。老人と少女の出会いをきっかけに、ふたりもまた自分自身について考えるようになり…。瑞々しい伊藤と長谷川が、名作と、百戦錬磨の共演者に触れ、どんな飛躍をするかが楽しみだ。


≪この舞台のツボ [1] キーワードは「絵本」≫

「人間風車」「ダブリンの鐘つきカビ人間」は、笑いと恐怖、あるいは、笑いと切なさ、笑いと人間の残酷さを描いてきた後藤ひろひと。
今回の「MIDSUMMER CAROL」はシリーズ第3弾と言われているのが、3作に共通しているのは“絵本”。「人間風車」では、売れない作家が、近所の子供達を集めて聞かせていた自作のおとぎ話が、思わぬ惨劇を生んだ。「ダブリンの鐘つきカビ人間」は、話そのものが絵本に描かれたような寓話だった。そして今回は、主人公の老人と少女を、さらにその周囲の人々をつなぐのが、1冊の絵本。サブタイトルの「ガマ王子とザリガニ魔人」というのは、その絵本のタイトルなのだ。わざわざサブタイトルに付けることからも、後藤がいかに絵本にこだわったかがわかる。

≪この舞台のツボ [2] 頼もしいキャスト陣≫

伊藤、長谷川以外の出演者は、ひとことで言って“手だれ揃い”。偏屈な老人には、最近では井上ひさしのこまつ座で大竹しのぶらと共演した木場克巳。マイペースな医師に、映像でもおなじみの山崎一。噂好きの患者に、ナイロン100℃の看板女優・犬山イヌコ。消防車と交通事故を起こした消防士に、ラーメンズの片桐仁。謎の入院患者に後藤ひろひと。後藤とともにストーリーを転がす木場の孫役に、小劇場の人気劇団サモアリナンズの小松和重。下心のある木場の姪に、「オケピ!」再演で健闘した瀬戸カトリーヌ。そして少女役には、激戦のオーディションを勝ち抜いた15歳の新人、加藤みづき。個性豊かで頼もしい実力派が集結した。

≪この舞台のツボ [3] 伊藤と長谷川が、男女逆転!?≫

この作品の見どころのひとつが、伊藤と長谷川の役。伊藤演じる室町は、周囲の人に愛されるため、少女マンガを読んで生きてきた女々しい男。うまく行かない人生を自分で変えることができず、ウジウジしては、優しくされたくて自殺未遂と入院を繰り返す。長谷川演じる光岡は、「北斗の拳」をバイブルに、少年マンガを読んで育った女。見かけとは反対に、女らしい言葉遣いや愛嬌とは無縁で生きてきた。ふたりの会話は、まるで男女逆転。後藤が、ふたりのためにあえて書いたというキャラクターだが、彼らが徐々に心を通わす様子は、クライマックスのひとつになるだろう。


>> バックナンバーへ
Copyright (C) 2007 PIA Corporation. All Rights Reserved.