【演劇・ミュージカル ≪舞台のツボ≫】

  (up 2003/12/12

「GOOD」

西村雅彦主演、山田和也演出というから、コメディとしては安心材料充分。しかも共演が益岡徹、宇梶剛士、銀粉蝶と実力派が揃った。ナチス政権下のドイツが舞台の翻訳劇だが、充分にこなれた笑いを届けてくれるはず。人のために良かれと思ってしたことが、思いもよらない方向に展開し、事態がどんどん悪くなる……。さらに、登場人物たちの焦りや困惑、不安や喜びといった心理状態を、さまざまな音楽で表現する音楽劇でもあるという。ひと味違う笑いを体験したい。

≪この舞台のツボ [1] コンビネーション≫

西村と山田は、これまで数々の作品でタッグを組んでいるふたり。もともとは、三谷幸喜が主宰する東京サンシャインボーイズの仲間なので、付き合いは20年以上。息の合い方は、まさに“あうんの呼吸”だ。ちなみにサンシャインボーイズは、相島一之、近藤芳正ら、味のある俳優が多数いるが、現在長い長い活動休止期間にある。

≪この舞台のツボ [2] 音楽劇≫

ミュージカルほど歌わない、あるいは、歌うけれど踊らないなど「音楽をフィーチャーしてはいるがミュージカルではない」作品を、よく「音楽劇」と呼ぶ。西村は昨年11月にも、バレエダンサーの西島千博、指揮者の西本智実らと「兵士の物語」という音楽劇をおこなっている。彼の興味はいま、音楽と演劇の共存にあるのかもしれない。

≪この舞台のツボ [3] 笑いとシリアス≫

音楽を見事に活用した、上質のコメディ。それがこの「GOOD」ではあるのだが、物語の舞台がナチス政権下のドイツになっているのには、もちろん理由がある。良かれと思ってしたことが悪い状況を生む、その“善と悪”それぞれが最も極端な形で表れる、それは戦争という事態。これは、笑ったあと、深いところで考えさせられる、笑いとシリアスが絶妙なバランスで配された作品だ。



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