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洋楽
ベック                                    (2007/2/2)
ベック

90年代にサンプリング・エイジのミクスチャー感覚を打ち出すアーティストとして、登場と同時にビッグ・ネームとなってから10余年。昨年10月に最新作『ザ・インフォメーション』を発表したベックが、4年ぶりにジャパン・ツアーを開催する。精神面の充実もあって、自分本来の資質を活かしたナチュラルなサウンドを生み出す現在の彼のサウンドを堪能したい。

ポピュラー・ミュージックのあり方は、テクノロジーの進歩と共に変化していく。'94年ゲフィンからシングル『ルーザー』とアルバム『メロウ・ゴールド』で登場したベックは、まさにそうした気運を象徴する新しいタイプのミュージシャンとして、大々的な注目を集めた。それはブルージーなアコースティック・ギターのリフとヒップホップ的なブレイクビーツやノイズの組み合わせに代表される、ミクスチャーのアイデアのためだけではない。ささくれだった響きを意識的に活かした音質自体が、流行語となった“ロウファイ”という言葉で紹介され、デジタル・リバーブで装飾された80年代の主流のサウンドと対照的なものとして衝撃を与えたのである。さらに'96年のセカンド『オディレイ』以降は、ミクスチャーの要素にジャズ、ソウル、ファンクなども加わり、音楽の創作において多彩な情報を編集的な目線で盛り込む姿勢を鮮やかに打ち出した。

しかし彼は、こうして確立されたパブリック・イメージだけを繰り延べることを良しとはせず、内省的な雰囲気の漂う内省的な作品も発表してきた。さらに2002年の『シー・チェンジ』は、あえてシンプルな音作りで、歌ものとしての説得力にポイントを絞り、従来のイメージと異なるオーセンティックで静謐なスタイルを打ち出している。こうした変化の背景には彼自身のプライベートな精神面での葛藤もあったようだが、同時に作品に込めた情報量の多さと編集センスに関心が集まっていた90年代的な発想を乗りこえていくものでもあった。

その後の彼は結婚や子供の誕生など精神面の安定もあり、2005年の『グエロ』、昨年の『ザ・インフォメーション』では初期の作風もナチュラルに活かした作品を生み出している。4年ぶりのジャパン・ツアーとなる今回は、ハッピーな現在の彼ならではのバイブレーションを届けてくれるだろう。


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