【洋楽】 (up 2004/11/10)
R.E.M.
 穏やかな佇まいの中に確固たる主張を持ち、現在のアメリカのロック・シーンを代表するトップ・グループとして君臨しているR.E.M.。そんな彼らが、最新アルバム『アラウンド・ザ・サン』を携えて1995年以来10年ぶりに、4回目となる来日を果たす。2005年に行われる来日コンサートの中でもとびきりの目玉となる注目の公演だ。

 R.E.M.は多様化した現在の音楽シーンの中で、幅広い層から深い信頼を得ている稀有なロック・バンドだ。それは決してたやすいことではない。単に若々しい勢いで人気を博したり、キャリアを重ねて古くからのファンの支持を得るのとは違って、多くの課題をクリアーしなければならない。まずジャンルが乱立する中で、様々なサウンドに囲まれているリスナーに対して、昔ながらのロック・バンドというフォーマットを取りながらも常に新鮮に響く音楽的な魅力を提示し続けること。また同時にそのように変化を続けながらも、バンドのキャリアからきちんとスジが通ったポリシーが、傍目にもナチュラルに感じられることだ。

 ある種相反するようなこの二つの課題を、R.E.M.は見事にやり遂げてきた。1980年に結成された彼らにとって最大の転機は、1997年にドラムスのビル・ベリーが脱退したことだ。だが彼らはそれすら作風を広げるきっかけとして前向きに乗り越え、その後は3人となって順調に活動を続けている。彼らがこの四半世紀に起きたニュー・ウェイヴやグランジといった激しい動きを乗り越えて、広く信頼を勝ち得ているのは、その姿勢に徹底的な誠実さがあるからこそといえるだろう。

 R.E.M.の基本的なサウンドは、決してエキセントリックではない。むしろ穏やかな温かみに満ちているといっても良い。しかしネット上でアメリカのイラク侵攻への異議申し立てをいち早く行うなど、自分達の主張には確固たるものを持っており、そんな意識は最新作『アラウンド・ザ・サン』にも健在だ。彼らのライヴは、穏やかな表情の内に込めた沸々とした想いが、場内の隅々にまで染み渡る特殊な磁場を放つ。語り草となっている前回の来日公演から10年を経た今回は、そうした誠実な凄みを体験する上で、またとない機会になるはずだ。
R.E.M. 写真


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