【洋楽】 (up 2004/10/27)
スティング
 2003年のアルバム『セイクレッド・ラヴ』で、同時多発テロ以降の世界に対する真摯な祈りに満ちた楽曲を披露したスティングの来日が決定。世界最速のラッパーといわれるトゥイスタと共演した「ストーレン・カー」も話題になるなど、音楽的な冒険心にも富んだ彼のステージは、悩める世界に対する包容力に満ちたポップさで魅了する。

 音楽が社会に対して何か有効なことをできるのか、と考えるミュージシャンは多数いる。そんな中でスティングは、約20年も前の80年代の半ばから、エチオピア難民救済のチャリティ・プロジェクト“バンド・エイド”、ベネフィット・コンサート“ライヴ・エイド”にも参加するなど、ミュージシャンと社会的な運動の関わりを積極的に押し進めてきた一人だ。その時のステージの模様は、11月にDVD化されるものでも見ることができる。

 しかしそうしたキャリアを持つスティングにとっても、2001年9月11日の同時多発テロは、あまりにも悲惨な出来事だった。ちょうどその日に自宅でスペシャル・コンサートを予定していた彼は、コンサートを中止するかどうかと考えた末に、犠牲者のために捧げる楽曲から演奏を始めるという決断を下している。この時の模様を収めたCDとDVD『…オール・ディス・タイム』は、まさにミュージシャンとしての彼が、世界的な悲劇に対して何をなすべきか悩み、そして実際に選んだ行動を記録した生々しいドキュメントといえる。

 こうした動きを経て、スティングが2003年にリリースしたアルバム『セイクレッド・ラヴ』は、当然のごとく混沌とした世界の中で希望を見出す願いを込めた作品となった。しかし大事なのは、この作品はシリアスではあるが、決して気難しいものではないということだ。実際このアルバムからは、メアリー・J. ブライジとの共演による「ホェンエヴァー・アイ・セイ・ユア・ネーム 」が、第46回グラミー賞において“Best Pop Collaboration With Vocals”を受賞している。切実に伝えたい気持ちがあるゆえに、歌もより親しみやすさを増していくスティングのステージは、人間的な温かみと誠実な説得力で、場内の観客一人一人の心を優しく包み込んでくれるだろう。
スティング 写真



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