【洋楽】   (up 2004/10/13)
フランツ・フェルディナンド
 ファースト・アルバム『フランツ・フェルディナンド』で、全英チャートに3位で初登場。今年のフジロックで初来日を果たし、注目を集めているグラスゴー出身の4人組によるジャパン・ツアーが決定。ネオ・ニュー・ウェイブ的なエッセンスを取り入れたキッチュでダンサブルなサウンドは、まさに現在のシーンの旬な魅力を体現するものだ。

 アルバム・デビュー前にニュー・ミュージカル・エクスプレスで2度も表誌に登場し、シンプルにバンド名を冠したファースト・アルバムで、全英チャート初登場3位という快挙を成し遂げたグラスゴー出身の四人組、フランツ・フェルディナンド。今やイギリスのロックの新しい動きを代表する存在として注目を集めているのは周知のところだが、彼らの場合、特筆すべきは、本国のイギリスのみならず、アメリカでも日本でもすでに新人とは思えないほどの人気を獲得している点。これは地域による嗜好の違いが顕著になってきている近年のロック・シーンの潮流を考えると、かなり異例のことといえる。

 その人気の一因になっているのは、メンバー全員がアート・スクール出身というところから生まれる絶妙なセンス。サラエボ事件で暗殺されたオーストリア皇太子の名前に由来するセンセーショナルなグループ名を持つ一方、そうした名前が放つ物騒なイメージとは裏腹に、バンド結成時のモットーが“女の子達が踊れるような音楽を作ろう!”というものであるあたりにも、そんなバランス感覚がうかがえる。つまり彼らは音楽のみならず、演劇、映画、文学などからの影響も貪欲に吸収した上で、4人編成のギター・バンドというフォーマットにのっとったサウンドを奏でているのである。単に無邪気なわけではなく、かといって過剰にシリアスでもない。音数を削ぎ落としたキャッチーなポップ感覚には、70年代末期のパンク・ムーブメントに端を発し、80年前後に一気に盛り上がったニュー・ウェイブ・ムーブメントを受け継いだようなキッチュな部分がありつつ、同時にキンクスに代表される英国的な伝統も合わせ持っている。サウンドだけでなく、衣装やアクションも目撃できるライブ・パフォーマンスは、そんな彼らのセンスを堪能するのに最もふさわしい場となるはずだ。
フランツ・フェルディナンド 写真



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