【J-POP・ロック】   (up 2004/4/2
くるり

 ドラマーとしてクリストファー・マグワイアが正式加入したくるり。その新体制での第一弾となるニュー・アルバム『アンテナ』を携えて、3月から突入した全国ツアー“安心しろ、秘孔ははずしてある”の東京・神奈川公演のプレリザーブの受け付けがスタート。今まさに大きく飛躍しつつある彼らの勇姿を見届ける絶好のチャンスの到来だ。

 96年に岸田繁を中心に結成され、98年のメジャー・デビュー以来、貪欲なまでに多様な音楽性を吸収し、一時はエレクトロニカにまで接近していたくるり。その道のりは、音楽性の変遷に連れ、ギターの大村達身の加入、ドラムスの森信行の離脱といったメンバー・チェンジさえも伴う険しいものだった。そして昨年、アメリカ・ツアーをきっかけに、彼らに惚れ込んだクリストファー・マグワイアが、正式メンバーとして加入。通常のドラムスのパターンにこだわらず、ドラム・セットの機材をフレキシブルに使いこなす“ドラム・セット・プレイヤー”クリストファーの加入は、4人のメンバーが一丸となって緩急自在のインタープレイを展開するライブ・バンドとしての新たなスタートを切るきっかけとなった。

 その新体制での第一弾となる最新アルバム『アンテナ』で、くるりは生演奏の醍醐味を徹底的に追求したギター・サウンドを展開している。これは単なる原点回帰とは違う。真摯な音楽表現を求めるがゆえに、すでに定型となったロックのフォーマットからあえて距離を置いた彼らが、自分達の生理感覚を研ぎすませた結果として、生身の人間同士の呼吸から生まれるアンサンブルの可能性を積極的に選び取ったのだ。その結果として彼らが完成させたのは、編成は非常にシンプルだが、闇雲な情報量の多さやこれ見よがしのカタルシスに頼らない純度の高い傑作だった。

 ここまでの彼らの試行錯誤は、ロックというフォーマットにリアリティを取り戻すためのプロセスだったと言っても良いだろう。そして今回のツアーでは、彼らにとって初めての日本武道館も含む精力的なスケジュールが組まれている。あいかわらずユーモラスなツアー・タイトル“安心しろ、秘孔ははずしてある”とは裏腹に、バンド・マジックの凄みをかつてない気迫で体験させてくれるはずだ。



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