【J-POP・ロック】   (up 2004/1/23)
布袋寅泰

 単に音楽的な貢献だけでなく、80年代初頭まではアンダーグラウンドな位置づけだった日本のロックを、メジャーな存在へと押し上げる上で、画期的な役割を果たしたBOOWY。彼らを抜きにしては日本のロック・シーンは、現在とはだいぶ違う形になっていたに違いない。1988年に解散し、バンドのギタリストでありソングライターであった布袋寅泰がソロ・アーティストとなってからのキャリアもすでに15年を越した。
そんな中で昨年末にはBOOWYの公式トリビュート・アルバムとしては初めての作品にあたる『Tribute』と『Respect』が二枚同時にリリースされ、BOOWY未体験の世代にもその業績の大きさは改めて浸透する機会を与えられたところだ。

 ソロになってからの布袋は、持ち前のカラフルなギター・ワークを軸にボーカリストとしても飛躍的な成長を見せると同時に、テクノロジーを駆使して斬新なロック・サウンドを提示。過去を振り返ることなく次々と新しい扉を開くような前のめりな姿勢で、多くのアルバムを発表するとともに、大規模なコンサート活動も精力的に展開し、21世紀の日本のロック・シーンを代表するビッグネームとしての地位を揺るぎないものとしてきた。そんな布袋にとって昨年リリースした最新アルバム『DOBERMAN』は、彼自らが最高傑作と断言する入魂の作品である。特に先行シングルの「NOCTURNENo.9」は、彼があえて封印していたBOOWY時代の得意技もナチュラルに披露してくれた。

 また『DOBERMAN』は、彼のイメージ作りに貢献してきた森雪之丞とのコラボレーションを休止し、町田康、小池真理子、吉田修一といった文学方面で活躍している人物を作詞に迎えるなど、歌詞の部分で新たなチャレンジを行った作品だ。さらにその映像版ともいうべき「DOBERMAN DVD」では、アルバムの全11曲を11組の映像クリエーターとのコラボレーションを展開。つまり現在の布袋は、サウンドにおける立脚点を明らかにした上で、言葉や映像とのタッグで新たな飛躍を迎えているのである。そんな勢いで昨年秋から繰り広げてきた全国ツアーもいよいよ大詰め。堂々とした風格と瑞々しい勢いが同居するステージを、是非とも体験しておきたいところだ。



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