【洋楽】   (up 2003/12/19)
フィクション・プレイン

 ロックの世界でも親子二代にわたって活躍するミュージシャンが続々と登場してきた。こうした台頭が目立つ理由には、確かに親の知名度という話題性があるのも否定できないだろう。しかしそれ以上に肝心なのが、二世のミュージシャンは、ロックが身近な環境で育つ傾向が強いため、同世代のミュージシャンに較べて、ロック・ミュージックの歴史全体を俯瞰したバランス感覚を身につける上で圧倒的に有利だという点だ。すでに半世紀におよぶ歴史を持つロックは、どんどんスタイルによって細分化され、世代ごとに住み分けが進んでいるが、こうしたアーティストの作風には、リスナーも親子で楽しめるような包容力がある例が少なくない。

 そんな中、今年デビューしたイギリスのロック・グループの中でご注目いただきたいのが、フィクション・プレインという四人組だ。このグループでヴォーカル、ギター、そしてメイン・ソングライターを務めているジョー・サムナーは、スティングの息子。ベースを担当しているダン・ブラウンとは高校で出会っており、すぐにバンドを組むが、この時のグループは自然消滅。それぞれ大学を卒業した後に、1999年にロンドンで再びバンドを組み、ギターのセトン・ダウントを迎えて現在にいたっている。
最初期にはニルヴァーナのカヴァーなどをやっていたという、いかにも90年代に10代を過ごしていた若手らしいエピソードも伝えられている新人グループだ。

 しかし今年3月にリリースしたデビュー・アルバム『エヴリシング・ウィル・ネヴァー・ビー・OK』は、ニルヴァーナ以降の若い世代だけでなく、ロック・クラシックス世代にもアピールできる懐の深い作品である。
彼らの最大の武器は、レッド・ツェッペリン、ポリス、U2、そしてニルヴァーナといった歴代のギター・バンドのおいしい部分を吸収する音楽的な貪欲さだ。アルバムではドラムスをポール・マッカートニーのツアーの合間を縫って、エイブラハム・ラボリエルJr.がサポートしていたが、その後オーディションによりピート・ウィルホイトが正式に参加。今回の来日は、そのライヴ・パフォーマンスの力量を直接体験する絶好の機会と言える。




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