【洋楽】   (up 2003/12/05)
デヴィッド・ボウイ

 67年にデビューして以来、歴史的名作『ジギー・スターダスト』に代表される70年代のグラム・ロック期をはじめとして何回もの黄金時代を築いたデヴィッド・ボウイ。彼のように長いキャリアを持つベテランの場合、オリジナル・アルバムを発表するのは3年や4年に一度という例も決して珍しくはない。だがボウイの場合はだいぶ様子が違う。なにしろ前作『ヒーザン』をリリースした後のツアーがあまりにも快調だったため、そのツアー・メンバーと共にスタジオに入り、1年3ヶ月というインターヴァルで最新作『リアリティ』を今年の9月に届けてくれたばかり。しかも大半の楽曲は今年に入ってから書いたものだという。それほど現在の彼の創作活動は好調なのである。

 こうしたインスピレーションはどこからやってくるのか。それはアーティスト本人でさえも自由にコントロールできるものではないだろう。ただし最近のアルバムが、80年代以降の作品と較べてどのように違っているか、ということは指摘できる。『ヒーザン』と『リアリティ』の最大の特徴は、70年代に数々のボウイの傑作を手掛けてきたトニー・ヴィスコンティが、20年以上の時を経て、再びプロデュースを担当している点だ。70年代にあまりにも偉大な業績を築いたため、90年代の初頭まではそれがプレッシャーとなっていたことをボウイ本人も認めていたが、逆にトニーとの再会は、現在が充実しているからこそ、過去の自分も受け入れられるようになった証といえるだろう。

 かつてデヴィッド・ボウイは何回も活動から手を引くことをほのめかしてファンを動揺させたことがある。そのようにして彼は自分のパフォーマンスに、先がないほどのテンションを注ぎ込んできたのだろう。しかし現在の彼はそのような力ワザに頼ることなく、21世紀の世界が直面している多くの問題についてのポジティヴなメッセージを秘めた楽曲を次々と生み出す勢いに満ちている。8年ぶりとなる今回の来日公演では、30周年ヴァージョンのリリースで改めて注目を集めた『ジギー・スターダスト』や『アラジン・セイン』に収録されたボウイ・スタンダードと最新ナンバーとのいずれをも、ナチュラルかつハイなテンションで突きつけてくれるに違いない。




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