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クラシック
 第45小節 ピアニスト:江口玲 (えぐち あきら)
江口玲写真
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僕のツアー中の荷物は重い。旅程に合わせた必要最低限の日常生活品と着替え、これらは誰が旅行しても同じ様なものだろうが、例えばアメリカのように広大な土地、厳寒の北部から真夏の様なフロリダまでの移動ともなれば、衣類の量だけでもばかにならない。水着同然の人々の間を分厚いコートとセーターを小脇に抱え、大荷物を引きずりながら汗だくで歩き回る間抜けさと言ったら、想像されたくもない。結構ずっしりと重たい燕尾服とステージ用の靴、小物類、万一レセプションなどがあった場合のスーツ、それらを入れる衣装バッグ、大事な(でも恨みがましく重たい)パソコン、そしてもっとも恨むべきはうんざりするような大量の楽譜の山。この中で軽減できるとしたらこの楽譜の山しかない。

 暗譜をしてソロを弾くのであればほとんどの楽譜はパソコンに取り込んで、楽譜自体は持ち歩かない。練習の時はピアノの譜面台に17インチのノートブックを置き、キー1つで譜めくりもできる。もともと楽譜に指使いやらなんやらと全く書き込みをしないたちなので、不便は感じない。さらに僕のパソコンにはメトロノームや録音機能も付いている。
さて問題は相方がいるときだ。「今回はベートーベンのバイオリンソナタ3番と7番、モーツァルトのソナタを前期後期から2曲弾きます。」なんて言われたら、分厚いソナタ集4冊を持ち歩くはめになる。「アンコールはクライスラーを数曲」ならば、下手すりゃ、やはり分厚い小品集を2冊、全く違うプログラムが3つあれば楽譜の量も3倍。できればステージでコピー譜は使いたくない。2週間以上の長旅ともなれば、しめて30キロ近いスーツケースを片手に、パソコンその他が入った10キロほどのリュックを背負い、履き古したジーンズに歩きやすいスニーカー、どこでも洗濯できるシワになりにくいシャツを着て、飛行機を乗り継ぎ、電車を乗り継ぎ、ヨタヨタと日々移動を続けるのである。それでも、ピアニストは楽器を持ち歩かないだけまだましなのかもしれないが。

 演奏家がステージで演奏する姿は実に知的である。少なくともそう見えて欲しい。実はなんてことはない、演奏家とは日雇い肉体労働者なのである。え?肉体労働者風なのはもしかして僕だけ?そりゃまずい!「ピアノの貴公子」と呼ばれるようになってみたいものである。 「襟の無い白いシャツ着てみれば?」
気功師に見えますよーってか?
そろそろ初夏なのにお寒いようで・・・・

 ピアノを弾く肉体労働者をご覧になりたい方は、7月4日(火)に浜離宮朝日ホールにいらしてくださいませ。

<フランス・プログラム・リサイタル>
7月4日(火) 浜離宮朝日ホール(東京)
[曲]フランク/コルトー編「バイオリンソナタ」、ホロヴィッツ「カルメンの主題による変奏曲」その他


ピアニスト  江口玲 (えぐち あきら) プロフィール
東京芸術大学附属音楽高等学校を経て、東京芸術大学作曲科、ジュリアード音楽院ピアノ科大学院修士課程、及びプロフェッショナルスタディーを卒業。作曲を佐藤眞、北村昭、物部一郎、ピアノをハーバート・ステッシン、外山準、金沢明子の各氏に、伴奏法を故サミュエル・サンダース氏に師事。1986年ヴィニアフスキー国際ヴァイオリンコンクールにてシュヴァイツァー賞(最優秀伴奏者賞)を受賞。90年、ジュリアードの協奏曲コンペティション、及びジーナ・バッカウアー国際ピアノ奨学金コンクールで第1位を獲得。92年、ウィリアム・ペチェック・ピアノデビュー賞を受け、リンカーンセンターのアリスタリーホールにてニューヨークリサイタルデビュー、ニューヨークタイムズ紙より絶賛された。

その後、欧米及び日本をはじめとするアジア各国にてリサイタル、室内楽、協奏曲、その他、ギル・シャハム、竹澤恭子、加藤知子、渡辺玲子、川久保賜紀、アン・アキコ・マイヤース、チー・ユン等、数多くのヴァイオリニスト達とも共演、世界中で好評を博している。93年には、アイザック・スターンをホストにホワイトハウスで演奏。94年、96年、99年に日本でのリサイタルツアー、97年にはジュリアード音楽院オーケストラのアジアツアーのソリストに抜擢され好評を得た。

CDはドイツグラモフォン、日本コロムビア、EMI・マーキス・クラシックス、フィリップス、ビクター等から発売されている。アメリカのカーネギーホール、エイヴリーフィッシャーホール、ケネディーセンター、パリのシャンゼリゼ劇場、ミュンヘンのヘラクレスザール、ウィーンのムジークフェライン、ロンドンのバービカンセンター等世界中の主要会場に出演、高い評価を受けている。2002年自ら編曲したガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」、ホロヴィッツ編曲の「星条旗よ永遠なれ」等、アメリカ人作曲家によるソロCD「ディア・アメリカ」を、また03年には2枚目のソロ・CD「巨匠たちの伝説」を発売、ともに「レコード芸術」誌で特選を得る。

ニューヨーク市立大学教授。そのスケールの大きな演奏に、今後の活躍が最も期待されるピアニストである。



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