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クラシック
 第36小節 リュート奏者:つのだたかし
つのだたかし写真
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〜記憶の中の町〜

ヨドバシカメラが、今はもうなくなってしまった淀橋の地名を有名にしてくれている。もっともこれが地名だなんて知らない人も多いだろう。

そう、私が育った町が淀橋だ。新宿西口を背にして都庁新都心の高層ビル街。私が小学校の頃はここには広大な淀橋浄水場があり、今の中央公園のあたりはコニカ、さくらフィルムの会社、小西六(コニシロク)があり、隣接して今よりずっと大きい敷地の熊野神社、東京生命という保険会社の野球グラウンドがあった。ここではよくセミやトンボ、トカゲをつかまえたもんだ。十二社(じゅうにそう)通りをはさんで向かい側は大きな十二社池。鬱蒼とした木々の間からのぞくと、魚取り網を持った子供たちに二の足を踏ませる「魚採るべからず」の木の立て札がたちふさがる。池は大きく、向う岸には何艘か屋形船がとまっている。そこから十二社の花街になる。横丁を入ればしゃれた街灯に柳がゆれる。三味線の音、鼓の音なども聞こえ、子供心に不思議な場所だった。この池も今はないが、十二社、十二社池の下、池の上の地名は現在もバス停の名で残っている。

この十二社池と熊野神社に挟まれ、甲州街道と青梅街道をつなぐ道が十二社通りだ。当時はとても勢いのあった商店街で、私の実家は通りに面した理容店、今で言うヘアサロン。この通りは角のタバコ屋から始まって、米屋、ガラス屋、味噌醤油屋、床屋、パン屋、酒屋、向かいがふとん屋、商売敵のパン屋、そば屋、つくだ煮・干物屋、八百屋とならび、珍しいところでは鍛冶屋まであった。学校の行き帰り、ここの背中の曲がったおじさんが左足の先で器用にふいごを押しながら真っ赤になった鉄を焼いてはトンテンカン叩いて形を作っていくのを飽きもせず見ていたっけ。

都心が移ってきてからは住人も減り、子供たちも少なくなったことから私の通った淀橋第3小学校も淀橋第2中学校も残念ながら統合されて廃校になってしまった。私の淀橋はずいぶん前に西新宿と改名され、帰ってもなんだかとりすました顔をしている。

名テナー中鉢聡さんからのリレーエッセイは、いつもコンビを組んでいるメゾソプラノの波多野睦美さんに渡しましょう。


≫次回は…メゾソプラノ歌手、波多野睦美さんです。


【コンサート情報〜チケット好評発売中!】

「サリー・ガーデン〜時を越える美しい愛の歌」
□2月10日(金) 高崎シティギャラリーコアホール(群馬)
 [出演]波多野 睦美(MS) & つのだたかし(Lu)
 [曲]ダウランド「悲しみよとどまれ」/イギリス古謡「グリーン・スリーブス」/ダウランド「流れよわが涙」他

「古歌・イタリア」〜ハクジュホール古楽ルネサンスシリーズ2006 第1回〜
□2月24日(金) ハクジュホール(東京)
 [出演]波多野 睦美(MS) & つのだたかし(Lu)
 [曲]ランディーニ「あふれる涙」/トロンボンチーニ「美しい処女」/ストロッツィ「聴いておくれ恋人たち」他

リュートソングコンサート
□3月12日(日) アルカスSASEBO(長崎)
 [出演]波多野 睦美(MS) & つのだたかし(Lu)
 [ゲスト]谷川俊太郎(詩人)
 [曲]モンテヴェルディ「おやすみなさいポッペア」/ダウランド「悲しみよとどまれ」/武満徹「三月のうた」他


■リュート奏者 つのだたかし プロフィール
リュート、バロックギター、19世紀ギターなど古典撥弦楽器の独奏、声楽とのアンサンブル公演や古楽CDのプロデュースなどを中心とした幅広い活動をおこなっている。繊細で暖かみのあるリュートの音色の美しさ、心に深く残る静かな音楽の表現で、その演奏は専門誌などでも高く評価される。
ドイツ国立ケルン音楽大学リュート科を卒業。ジャンルを越えたユニークな音楽スタイルで注目される古楽器バンド《タブラトゥーラ》および《アンサンブル・エクレジア》を主宰。古楽のさまざまな楽しみ方を聴衆に示し、注目されている。ケンブリッジ音楽祭、リンカーン古楽祭出演などで国際的にも高い評価を得ている波多野睦美とのリュートソング・デュオおよびリュート・ソロでの国内外公演の他、《タブラトゥーラ》では国際交流基金の後援を得てイタリア、エジプト、インド、カナダ、韓国など世界8カ国で公演を行なう。
インディペンデントCDレーベル『パルドン』をプロデュースし「優しい森よ/ダウランドのリュートソング」「古歌」「リュート」「イスパニアの歌」など多数の古楽CD作品を発表、録音から制作・ジャケットアートを含めた一つの作品としての丁寧なCD作りの姿勢は、専門誌でも取り上げられ、話題をよんでいる。

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