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クラシック
 第27小節 作曲家:細川俊夫
細川俊夫写真
Photo:Schott Promotion
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高関健さん、エッセーのリレー、引き渡してくださって、ありがとうございます。

僕は、今、北ドイツのシュレースヴィッヒ・ホルシュタイン音楽祭にいて、自作を指揮したり、オペラの練習に立ち会ったりしています。日本は暑そうですけれど、こちらはとても涼しくて、僕は風邪を引いてしまいました。一週間、キールの郊外にあるSalzau(ザルツァウ)という村のお城にいました。そこには、世界各国から集まった若者たちがオーケストラを作っていて、二ヶ月間、一緒に生活をして音楽を作り上げていきます。彼らは日本にも一週間だけ、エッシェンバッハとともに行きます。

実は、僕はそのお城の「指揮者の部屋」に住んでいました。僕も自作のヴィオラ協奏曲(独奏者は今井信子さん)と新作のトランペット協奏曲をそのアカデミーオケで指揮をしたのです。そして次に来るエッシェンバッハさんが到着前で、その部屋が空いていたのです。それはものすごいスィートで、2つも寝室があり、リビングにはスタインウェイのピアノまで置いてありました。貧乏作曲家の生活に慣れている僕には、その部屋はあまりにも広すぎて落ち着けませんでした。

それにしても、作曲家であることと、指揮者であることとは、どうしてこんなに扱いが違うのでしょう。本当は、作曲家のほうが指揮者よりも偉いんですよ!! でも現代では誰もそのことがわかってくれずに、いつもはごみのように扱われます。まあ過去に偉い作曲家がいっぱいいて、受けない音楽を書く現代の作曲家は、必要ないのでしょうけれど…。指揮をしたといっも、僕は自作を頼まれたときにだけやることにしています。人の曲や、特にクラシックの偉大な作曲家の曲なんかとても演奏できません。昔ベルリン留学時代に、同じ時期にカラヤンの下で学んでいた高関さんの勉強ぶりを見てとても感動しました。あなたは、公園でもレストランでもどこでもスコアをもって、何時間もそこに座り続けて勉強していましたね。指揮者というのは、こんなにも勉強しなければいけないのだ、と知りました。ヨーロッパ音楽の深さを読んでいくには、長い時間がかかりますね。

僕は、ザルツブルク音楽祭の委嘱で書いた、オーケストラ曲『循環する海』の初演が8月20日、21日に、ウィーンフィルとゲルギエフの指揮であり、それを聞いてから日本に帰国します。
このエッセイは、僕の大好きな素晴らしいハーピスト、吉野直子さんにリレーされます。


≫次回は…ハーピスト・吉野直子さんです。

■作曲家 細川俊夫 (ほそかわ としお) プロフィール
1955年広島生まれ。1976年から10年間ドイツ留学。ベルリン芸術大学でユン・イサンに、フライブルク音楽大学でクラウス・フーバーに作曲を師事。

1980年、ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習に初めて参加、作品を発表する。以降、ヨーロッパと日本を中心に、作曲活動を展開している。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団創立100周年記念作曲コンクール第1位(1982)、中島健蔵賞(1988)、ラインガウ音楽賞 (1998)、デュイスブルク音楽賞(1998)、ARD-BMW ムジカ・ヴィヴァ賞(2001)を受賞するなど、国際的に高い評価を得ている。2001年、ドイツ・ベルリンの芸術アカデミー会員に選ばれる。2006年から2007年にかけてベルリン高等研究所からフェロー(特別研究員)として招待を受けている。

ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習における講師(1990〜 )やルツェルン国際音楽祭(2000)、ムジカ・ノヴァ・ヘルシンキ (2003) のテーマ作曲家をはじめ、ヨーロッパの重要な現代音楽祭のほとんどから招待作曲家あるいは講師として招かれ、作品が演奏されている。1998年ミュンヘン・ビエンナーレの委嘱により、初めてのオペラ『リアの物語』(鈴木忠志の台本・演出)を初演、「東洋と西洋の出会いから新しい音楽世界を切り開いた作品」と絶賛された。2004年エクサンプロヴァンス音楽祭の委嘱により、2作目のオペラ『班女』がフランスで世界初演、ブリュッセルのモネ劇場で再演、成功を収める。
2005年8月、ザルツブルク音楽祭において、同音楽祭委嘱のオーケストラ作品がヴァレリー・ゲルギエフ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって世界初演される。

1998年より東京交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンス。2001年より武生国際音楽祭音楽監督。現在、東京音楽大学客員教授。




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