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クラシック
 第26小節 指揮者:高関 健
高関 健写真
写真:佐藤雅英
クラシック・オーケストラ(国内)をMyアーティスト登録する



広上さん、お元気そうで何よりです。初めてお会いしたのは1984年、オランダのヒルヴェルスム。「コンドラシン・コンクール」の受験者に与えられた暗いドーミトリーの一室を覚えていますか?日本から直接、しかも初めてヨーロッパに飛んできたという広上さんは、旅の疲れも見せずに、私のコンクール体験談にすかさず突っ込みを入れまくりましたね。エスプレッシーヴォな語り口に圧倒されつつも意気投合して、毎晩遅くまで語り合ったのでした。一緒に受けたこのコンクールで広上さんは見事優勝され、その後の海外での大活躍のきっかけをつかみました。

話は変わりますが、最近ベートーヴェンの第5交響曲を続けて指揮する機会に恵まれました。状況は様々で、定期演奏会、レクチャー付きのコンサート、中学生のための音楽教室など。当たり前の話ですが、この曲の指揮は本当に難しい。すべてが突き詰められていて、音の動き一つをとっても、次はこの音以外考えられないという、ドンピシャリの選択です。テンポも強弱も注意深くバランスを取らないと、すぐ形が崩れてしまう。それでいて、曲の本質である強靭な推進力を何としても手に入れなければ、演奏が成り立ちません。オーケストラとの練習の最初から最善を尽くしているつもりですが、うまくいった例がない。しかも誰もが知っている名曲中の名曲ですから、8分音符が1個ずれても、聴衆にバレてしまいます。今回印象的だったのは、札幌交響楽団との音楽教室での出来事。第1楽章が終わって、しばらくの沈黙。Kitaraの客席にいっぱいの中学生たちがベートーヴェンの音楽に圧倒され、身じろぎ一つせずに、第2楽章の始まりをじっと待っていました。一人ひとりが音楽の素晴らしさを理解して、噛みしめていたようです。ベートーヴェンの偉大さをこころから実感した瞬間でした。

広上さんが後進の指導に本腰を入れ始めたことは聞き及んでおります。実は私も昨年から、芸大大学院のオペラ科で指導をしています。今年はモーツァルトの「皇帝ティートの慈悲」に取り組んでおり、熱意のある学生さん達に囲まれ、充実した時間を過ごしています。10月には奏楽堂で公演を行います。また9月には文豪、森鴎外の翻訳になる、グルックの「オルフェウス」の公演にも参加します。桐朋学園では、今年から指揮副科の学生を教えています。多くの先輩から学んできたことを、今度は若い世代に惜しみなく伝える。私たちも責任の重さを痛感する世代になりましたね。

さて、お預かりした大事なバトンを、作曲家の細川俊夫さんにお渡ししようと思いますが・・・・多忙を極める細川さん。いまどちらにいらっしゃいますか?



≫次回は…作曲家・細川俊夫さんです。

■指揮者 高関 健 (たかせき けん) プロフィール
78年桐朋学園大学卒業。ベルリン・フィル・オーケストラ・アカデミーに留学後、カラヤンのアシスタントを務め、タングルウッド音楽祭でバーンスタイン、小澤征爾らに指導を受けた。83年ニコライ・マルコ記念国際指揮者コンクール第2位、84年ハンス・スワロフスキー国際指揮者コンクール優勝。翌年1月日本フィル定期演奏会でデビュー。以後、実力派指揮者のひとりとして活躍を続けている。ウィーン響、ベルゲン・フィル、ベルリン・ドイツ響、クラングフォーラム・ウィーン等に客演。99年プラハ放響、2000年ケルン放響公演では現地批評家からも絶賛を博した。
96年渡邊暁雄音楽基金音楽賞受賞。
現在、群馬交響楽団音楽監督、札幌交響楽団正指揮者。



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