@ぴあメールマガジン クラシック アーティスト・リレー・エッセイ〜5線紙にのせて〜
第12小節 ピアニスト:伊藤恵
2004/12/01
 田部京子姫からバトンタッチした伊藤恵です。先日姫のシューベルトアーベントにゲスト出演させて頂いて、心から感謝。幻想曲と名のついた連弾曲ですが、美しいだけでなく、寂寥感溢れる孤独な世界にリハーサル中から二人でどっぷり浸ってしまい、あまりに重いシューベルトの精神世界にお互い胸が詰まるような気持ちになって、無言のまま顔を見合わせてしまう程でした。時々自分が弾いているのか、京子姫が弾いているのかわからないくらい二人の音が溶けあう瞬間があって、本当に幸福な時間でした。

 ピアニストは、リサイタルといえば一人ぽっちで舞台に上がり、いつも孤独で寂しい。だから、ピアノデュオや室内楽、そしてオーケストラとコンチェルトをやらせて頂けると、一緒に音楽をやる喜びにわくわくしてしまいます。来年1月には都響で、あの90歳を越えたジャン・フルネ先生とモーツアルトの23番を共演させて頂きます。フルネ先生の高貴な香りたつような音楽に前奏を聴いているだけで、美しさに酔ってうっとりして、自分のピアノソロ出るの忘れないか、今から心配。実はコンチェルト弾く時のピアニストの位置は、オーケストラを聴く最高の場所なのです。初めてフルネ先生と共演させて頂いた曲はベートーヴェンの4番でしたが、冒頭の短いピアノソロの後に出てきたオケのあまりの美しさに茫然自失。いきなりここは天国ですかと聞きたくなるほど。。。。ピアノソロなんとか出ましたが。。。

 フルネ先生との共演の翌日から2日続けて、今度は小林研一郎先生指揮日フィルで、シューマンを園田高弘先生の代役で演奏します。音楽の話になると青年のように目を輝かせて夢中で語り続けた先生、ベートーヴェンを演奏していらっしゃる時は、本当に一音一音まるでベートーヴェンに向かって語っていらっしゃるようでした。合掌。

 今年の暮れには、加藤知子さんとブラームスのヴァイオリンソナタ2番をオペラシティでご一緒します。彼女とは音楽界のきんさんぎんさんと呼ばれるまで一緒に演奏しようねと約束しています。
 では加藤きんさん、次ぎのエッセイよろしくお願いします。伊藤ぎんより。

≫次回は…ヴァイオリニストの加藤知子さんです。
伊藤恵 写真

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■ピアニスト 伊藤恵 プロフィール
幼少より有賀和子氏に師事。桐朋学園高校を卒業後、ザルツブルク・モーツァルテウムおよび、ハノーファー国立音楽大学において名教師ハンス・ライグラフ氏に師事。
数々の国際コンクールに入賞後、1983年第32回ミュンヘン国際音楽コンクールピアノ部門で日本人として初の優勝。サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団と協演し、ミュンヘンでデビュー。その後もミュンヘン・シンフォニカー、フランクフルト放送交響楽団ほかの定期公演に出演。日本ではNHK交響楽団と若い芽のコンサートに出演後、数々の主要オーケストラと協演を重ねている。
録音では、ライフワークとしてシューマンを追い続け、「シューマニアーナI〜XI」をリリース。ブラームス、ショパン他の作品集なども。1993年日本ショパン協会賞、1994年横浜市文化賞奨励賞受賞。

オフィシャルページ
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