@ぴあメールマガジン クラシック アーティスト・リレー・エッセイ〜5線紙にのせて〜
第6小節 作曲家:吉松隆
2004/8/25
作曲家の吉松隆です。〈クラシック系音楽の作曲家〉と言うだけでも21世紀の現代では充分に非常識な存在なのですが、その上ほとんど国際保護動物なみの珍獣〈交響曲作家〉というのをやっています(笑)。

ちなみに「交響曲(シンフォニー)というのは何か?」と言いますと、それはもう「この世で一番作るのが面倒くさくて、演奏するのが大変で、しかもお金にならない音楽」なのですよね。西洋音楽史の数百年におよぶ歴史を見ても、これを書いてお金持ちになった作曲家は一人もいませんし、書いて幸せになった人も見かけません。生きているうちに演奏すらされない…という例もこれまた非常に多いですし。じゃあ「なんでそんなものを書くのか?」と言いますと、うーん、よく分かりません。(おいおい)

しかし、私の場合は非常に幸運なことに、盟友:藤岡幸夫氏の指揮のもと、イギリスのCHANDOS(シャンドス)というレーベルで、すべての交響曲(と言ってもまだ5つしかありませんが)が録音されCDで聴けるという不当なまでの優遇(?)を受けて、今も生き延びています。世の中、捨てる神あれば拾う神あり、ということでしょうか。

と言うわけで、最近はその恩をクラシック界に返すべく、イラスト(というよりマンガ)で図解した「初心者からマニアまで使える究極のクラシック音楽入門書」三部作を執筆中です。最初が、オーケストラ入門篇とでもいうべき「図解クラシック音楽大事典」(学研/発売中)で、今はその続編というべき「用語事典篇」と「名曲事典篇」(まだタイトルは未定)をボソボソと書き綴っています。

そうそう、思い出しましたが、須川展也氏のための新しいコンチェルトも書いているのでした。ちなみに「コンチェルト(協奏曲)とは何か?」と言いますと…、おっと、話が長くなってしまいましたので、続きはまた別の機会に…。

≫次回は、サクソフォニストの須川展也さんです。
吉松隆 写真
吉松隆 イラスト
■作曲家:吉松隆 プロフィール
1953年(昭和28年)東京生まれ。慶應義塾大学工学部を中退後、一時松村禎三に師事したほかはロックやジャズのグループに参加しながら独学で作曲を学ぶ。
1981年に「朱鷺によせる哀歌」でデビュー。いわゆる「現代音楽」の非音楽的な傾向に反発した「世紀末抒情主義」を主唱し、室内楽作品、舞台作品、ピアノ曲、ギター曲、邦楽曲など多くの作品を発表している。作品は「鳥たちの時代/吉松隆作品集」(カメラータ・トウキョウ)を始めとしてそのほとんどがCD化されており、1998年からはイギリスのシャンドスとレジデント・コンポーザーの契約を結び、全オーケストラ作品を録音するプロジェクトが進行中である。(「2004年8月現在」シャンドスより「7枚」のCDをリリース、絶賛発売中。)
また、評論・エッセイなどの執筆活動も盛んで、著書に「図解クラシック音楽大事典」(学研)、編著に「クラシックの自由時間」(立風書房)などがある。

オフィシャルページ http://homepage3.nifty.com/t-yoshimatsu/
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